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私は最近就職したばかりで、中々ホールの雰囲気が掴めず、サーバーとして自分がなすべきことの組立てが上手くいかずにすべてが後手後手になり、上司に叱られるという悪循環を巡っている。
これはその一場面だろう。
そして、私が手ぶらでサーバーの待機場――パントリーという――に戻った場面に違いない。
エリアに出たついでになにか一つでも食器等を持ち帰り、客が帰った後のテーブルの片付けを楽に行えるように、手ぶらでは帰らないこと――1WAY 2JOBS――を常々言われている。
しかし、担当エリアの座席が埋まり、オーダーや料理提供等のやることが重なり続けるとどうしても手ぶらになりやすくなり、先程もそのことで怒られたばかりだというのに、なんと疲れることか。
ワンクッションを、そう、ワンクッションを誰かが担ってくれれば体制を整えることが可能だというのに、そのワンクッションを担ってもらえないのだ。
まだまだ不慣れな私自身がエリアを一人で完璧に回れるはずがなく、それを上司は理解してくれないのだ。
始めの頃は嘆き、他力本願な気持ちがあったが、今では自分がやらなければならないという気持ちで取り組んでいる。
助けを期待しなくなったのだ。
不意に揺れが収まった。
様々な感情が私の中を逡巡するものの、今は衝撃に耐えることで精一杯であった。
握り締めた手の力を抜き、奇妙な形の鍵を見つめる。
私は、この鍵を――。
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