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慌ただしくホールフロアを動き回り、ようやく休憩に入れた。
控え室の椅子に腰掛けてホッと息を吐き、思い出したようにポケットの中から鍵を取り出した。
あの後、結局交番に行かずに持ち帰ってしまったのだ。
昨日の光景がもしも現実になるとしたら、この鍵は未來を見せてくれる鍵なのかもしれない。
この鍵さえあれば、私は怒られない。
再びポケットに鍵をしまい、束の間の休憩を味わう。
夜もホールである。
――
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ホールフロアを慌ただしく動き回っていた時、見覚えのある客たちが私の担当するエリアの座席に座った。
お冷やとシルバーセットを持ち、再びじっくりと彼等の顔を確認した時、私はそれが誰なのかはっきりとわかったのだ。
実は、昨日の光景が現実になる可能性について私は半信半疑だった。
鍵を信用していなかった。
しかし、現実に客がいる。
それを受け入れずに、一体どうしたらいいと言うのだ?
まずは確かめなければならない。
彼等のことで私は怒られるのか、ということを。
再びエリアを駆け回り、彼等が帰った後、私は上司に叱られた。
昨日見た光景とまったく同じ内容で、私は上司に叱られたのだ。
半信半疑だった鍵の不思議な力を認めざるを得ない瞬間だった。
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