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七月二十三日土曜日。
東京都心の最高気温は三十度を超えることが予想されたこの日。俺、夏野太陽(なつのたいよう)十三歳は、
「あづい……」
クーラーのついていない、自宅の自室の床にぶっ倒れていた。
遡ること、一週間前。
中学二年生になって、新しいクラスにもだいぶ友達が出来て、一週間後には楽しい楽しい夏休みが待っている。もう皆で遊びに行く約束や予定も立てていたこの時期、
「今年の理科の宿題は、自由研究にするぞ~」
理科を教えていたおじいちゃん先生のその一言は、俺たちにいやな予感を感じさせるには充分だった。
「せんせ~、自由研究ってなんですか~?」
クラスの女子の一人が質問する。
「うん、理科に関することを、なんでもいいから、調べるなり、実験するなりして、ノートにまとめてくればいい。量はどんなに少なくても、どんなに多くてもいい」
全員が、いやな予感は気のせいだったと思ったそのとき、
「ああ、この宿題も、満点か零点かしかないからな。気合い入れないと、二学期の理科の成績は五段階の一なんてこともあるから、気をつけるように」
空気が凍りついた。
「まあ、最悪、自分が夏休みにした節電方法とかでもいいぞ」
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