2人が本棚に入れています
本棚に追加
「うるさあああい!」
「ぐふぁ!」
ソファの上にあったクッションを投げてきやがった。顔面にもろくらった。
「大丈夫だもん! 最近いっぱい練習したから大丈夫だもん! 失敗は成功の母だもん!」
「分かった! 分かったから! クッションを振り回すな! 痛い痛い!」
燈が落ち着くのを待つ。
「…………宮部は気にしないと思うぞ? 料理出来なくても」
「わたしが気にするの!」
女心はよく分からん。
妹は、俺の親友とでもいうべき、宮部雅彦(みやべまさひこ)が好きで、気を引くために料理を利用しようとしているのだが、おわかりのように妹は料理が出来ない。
「宮部はそんなの気にしないおおらかな性格だというのに、このバカはいつまでもぐちぐちと――――」
「…………誰に向かって話してるの?」
「はっ? 俺はいったいなにを?」
「大丈夫?」
「そうだ、水だ。水を飲みにきたんだ」
コップを取り出し、蛇口から水をコップに入れる。そのまま水を一気に飲み干す。
「ぷっはあ! 生き返るぅ!」
「ていうかさあ」
妹がエアコンの設定温度を下げながら話しかけてくる。
「節電ならエアコンの設定温度を少し上げるだけでいいんじゃない?」
「分かってないな! あの先生が普通の節電でいいと言うわけないだろ!」
「いや、知らないけど。お兄ちゃんのバカな考えにわたしを付き合わせないでよ」
「じゃあ俺にどうしろって言うんだ!」
「知らないよ。自分で考えれば?」
「ちくしょー! こんな家出てってやるー!」
「は~い、いってらっしゃ~い」
最初のコメントを投稿しよう!