始まりの(アホ)節電計画

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     ☆     ☆     ☆     ☆     ☆ 「とはいえ、いったいどうするか……」  勢いだけで家を出てきて、なんも考えてなかった。  ミーン、ミーン、ミーン 「…………」  …………暑い。とりあえず、涼める場所を探さないと、また変なことを口走るようになってしまう。 「どうすっかなあ……」 「ん? おお、夏野じゃん」  後ろから声をかけられたから振り向く。 「おお、末継じゃん」  同じクラスの末継亮介(すえつぐりょうすけ)が、エナメルバッグをかついで自転車に乗っていた。 「こんなとこでなにぼーっとしてんだよ」 「いや、ちょっとな。おまえは?」 「ん? ああ、理科の自由研究で調べ物があるから、図書館に行こうと思ってさ」  図書館か! その発想は無かった! 「俺もついていっていいか?」 「お? ああ、別にいいぞ」 「あきた……」  机に体ごと突っ伏す。隣では、末継がずっと調べ物をしたり、ノートになにか書いたりしている。 「なに調べてんの?」 「ああ、ガラパゴスの動物の進化について調べてるんだ」 「へええ……」 「おまえは理科の自由研究どうするんだ?」 「え? ああ、ちょっとな……」  まさか節電だとは言えない。言いたくない。 「? なんだよ」 「…………『電気を使わない節電』」 「ふ~ん? いいんじゃん?」 「そうかぁ? おまえに比べたらなんか、恥ずかしくなってきたよ」 「そんなの人それぞれなんだから、別に恥ずかしがらなくていいだろ」  ああ、しかし、図書館は涼しくていいなあ。このまま眠っちゃいそうだ――――  グー  急に鳴った俺の腹の音が、図書館に響き渡った。 「…………」 「…………」  図書館中の人々が、俺たちのほうを見てくる。やばい、すごい恥ずかしい。 「…………そういやあ、昼飯まだだったな」 「…………すまん」  一緒に恥ずかしい思いさせて、しかも気を使ってもらって、本当にすまん。 「まあ、俺も腹減ったし、コンビニでなんか買って食おうぜ」 「し、調べ物はもういいのか?」 「おう。だいたい終わった」  まじか。ずいぶんと早いなおい。まだ二時間しかたってないぞ。 「さあ、早く行こうぜ。…………ここ、居づらいし」 「…………すまん。本当にすまん」  周りの人々の冷たい視線から逃げるように、俺たちは、図書館からそそくさと退散した。
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