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2階にたどり着いた俺は絶望した。見渡す限りのコンクリート。床と柱と壁。それに曇った窓しかない。
3階に駆け上がる。そこも2階と同じく。コンクリート以外何も無い。
(まずい。“鏡”がない)
トイレを探したが取り壊された後のようで、仕切りの壁以外何も残っちゃいなかった。
――…奴隷コンタクトレンズの弱点。
それは鏡だ。誰かの姿を見る前に自分の姿を見れば、主人を自分と認識する。ニュースで何度も繰り返されたその情報は俺の頭の中に残っていた。
しかしそれはおそらく美貴の頭にも。だからこんな何も無いところにわざわざ連れ込まれたんだろう。
車の中じゃ鏡があるし、街中もアウト。
山の中じゃ逃げられたら追いかけきれない。
この、階段が1つしかなく見通しのいい廃ビルなら袋のネズミ。美貴はじわじわ追い詰めて自分の姿を見せればいい。
勝利条件が不公平すぎる。
俺は美貴を振り切って逃げた後どこだかわからないこの場所から誰も見ないまま逃げて、鏡を見つけなきゃいけない。
ポケットに入れていたはずのスマホは奪われていた。でも諦めるわけにはいかない。俺は4階に駆け上がった。
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