0-はじまりの日

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「忠には悪いことしたかな。 奥さんも娘さんもいるのに、ここに住むの強制しちゃって…」   申し訳なさそうにそう言ったのは将くん。 皆で一緒に住もうって最初に言い出したのは将くんだった。 でも―― 「いえ、そんなことないです。 俺、リーダーから声かけてもらえてうれしかったっスから」 「そうだよ、将くん。 みんな将くんの気持ち知ってる」   俺は箸を止め将くんの方を見て言った。 「それに、みんな同じ気持ちだから」   皆がテラスのテーブルを見た。 奥の方にあと一席ある。 よくあいつが好んで飲んでたメーカーの缶ビールと、1人分の料理が乗った皿。 そのどちらも減ることはない。 あいつはここにはいない。 来ることもない。 …あいつはもういないのだから。 「メンバーは皆で支え合うもの、でしょ?」   いつか将くんが言った言葉だ。
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