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その日、はじめて彼を見た時、俺の役目は終わったのだと思った。
悲しくはなかった。
むしろほっとした。
どれだけがんばっても、その場所が俺のものになることはなかったから。
いつもどこかで違和感を感じていた。
ここにいるべきなのは俺じゃない。
俺はあの人の代わりを務めているだけに過ぎない。
ずっとそう思っていたからこそ、俺はただこのバンドの方針に従ってやってきた。
俺は自分の意見を言うことはなかった。
ずっとどこかで皆に遠慮していたのだ。
皆と一緒にやる音楽は楽しかった。
これは嘘じゃない。
でも、窮屈だった。
だから、これですっぱり諦めることが出来ると思った。
彼なら、きっとやってくれる。
俺はこのバンドが大好きだった。
だからこそ、俺はここから離れたかった。
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