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まきが俺の子を妊娠したことがわかったのはまきが高3の秋のこと。
まきは真面目な優等生で、結構有名な大学を目指して受験勉強をしていた。
…そんなまきが妊娠した。
まきの親父さんも学校の先生達も驚いていた。
中には俺が無理矢理まきを襲ったんじゃないかと言うやつまでいたようだ。
まきの親父さんは、親父さんなりにまきの将来のことを考えたのだろう。
まきに子供を堕ろすように言った。
親父さんは俺のことを嫌っていた。
俺みたいに学歴もない、ミュージシャンという途方もない夢を追いかけてバイトに明け暮れている男なんて頼りにならないと思ったのだろう。
俺はまきとまきのお腹の子を守るために親父さんと何度も話し合った。
俺みたいなやつにまきと子供を養っていけるわけがない。
まきだってここで子供を産むよりも、大学に行ったほうが身のためになると言われた。
親父さんの気持ちもわからなくはなかった。
自分でも俺の頼りなさはわかってたし、自分たちがまだガキだってこともわかってた。
それでも…子供を殺すことなんてできなかった。
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