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安い居酒屋でお互いの今の話をした。
そいつとは結構仲が良くて、俺が家族のために夢を諦めて仕事に明け暮れてるって言ったら、そんなのもったいないと言いだした。
俺がトワバナに憧れて練習に明け暮れていた頃、俺の夢を応援してくれていた人のひとりがそいつだった。
当時仲の良いメンバーでバンドを組んでいた頃、技術を上げるためにはそれだけじゃいけないと思いつつも、友達を裏切る行為のような気がしてなかなか一歩を踏み出せなかった俺に対して『おまえには才能がある。俺達のことなんか気にせず行ってくれ』と背中を押してくれた人こそ彼だった。
俺が抜けた後すぐそのバンドも解散して、やつは良いバンドメンバーと出会えたみたいだけど。
そいつの言葉に心が揺れることなんかなかったと言えば、嘘になる。
俺は確かにまだ夢に対して未練があった。
でも、それと同時に今の幸せを捨てる勇気などなかった。
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