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あの日のことは今もよく覚えている。
大切なあの人を失った日だから。
俺はあの人のことが好きだった。
世界の誰よりもあの人のことが大事だった。
けれど、あの人の俺に対する執着に、だんだん俺は恐怖を感じるようになっていた。
あの頃の俺に自由はなかった。
俺は、このままじゃあの人も、俺自身もだめになると思ったんだ。
だからこそ俺はあの人のいる家を捨てた。
距離を置けば、きっと昔の優しいあの人に戻ってくれると思っていた。
でも、それは思い違いだった。
あの人はまずます俺に対する執着をひどくしただけだった。
俺達は必死であの人に居場所を知られないようにしていたのに、あの人はあっさりと俺の居場所を見つけた。
俺はますますあの人への恐怖心を強くした。
あの人が怖くて仕方なかった。あの人が怖くて怖くて怖くて怖くて――
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