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「なんだ……また誰かが乱痴気騒ぎを起こしたんか?」
簡素な机上に頭を預けて、やや疲労の色を隠しきれない看守の男が、今しがた入ってきた二人に一瞥を送る。
「身の程知らずの田舎者を連れてきた」
「はぁー……今日で五人目だよ。これだから王都勤務は嫌なんだ」
看守は恨みの籠った重いため息を吐く。
「栄転、栄転と御両親も喜ばれておったではないか」
「そうなんだけど、こんな場所に半日も拘束されたら気が滅入りそうだよ」
そう答え、そのままものぐさな視線を青年に移した。
「なに君がその乱痴気騒ぎを起こした本人?」
「話の流れからそうみたいですね……」
「ちょっと調べないといけないから所持品を出してくれる?」
看守は嗤笑と億劫が入り交じった表情を投げ、手慣れた様子で仕事をこなす。だが数多の犯罪者を相手にしてきた看守でせさえも、この青年は常軌を逸していたらしい。
「……君ふざけているの」
看守の顔は笑っているが、眼光は鋭く冷やかな光を有していた。
「またまたそんなことないっすよ」
青年は言下に否定してブンブン顔を横にふる。
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