1 帰郷

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メーリア大陸の南端に広大な領土と軍事力を誇る大国があった。その名はセントラル王国。 数多の魔法使いを輩出してきた魔法大国として古来より大陸中に名を轟かせ、なかでも不世出の大魔道師と言わしめた男がいた。名はシャルケラ。のちの勇者であり、セントラル王国の王にまで上り詰めた稀有な男であった。 シャルケラの名は三百年経った今日(こんにち)まで語り継がれ、その功績は今もなお色褪せず、人々の生活のなかに色濃く残っていた。 その一つが、百年余りの歳月を要して竣工した、大陸を南北に横断するペーラ運河である。 セントラル王国から北東のホッヘェム帝国を千キロ以上を結ぶ長距離運河は、両国の物流輸送の要であり、大陸の小国々にとって産業の命とまで言われている。 勇者として国王としてシャルケラが後世に残した数ある文化や遺産。その恩恵を受けセントラル王国は発展を続けてきた。 特にセントラル王国の王都ハレスティンは、シャルケラ自ら設計した難攻不落の城郭都市(じょうかくとし)であり、重要な大陸間貿易の拠点である港湾都市(こうわんとし)でもあった。そのため様々な人種が移住し、異国の文化、思想などを折衷しながら独自の生活様式を生み出していった。 その街並みは美しく、ハレスティン人の誇りでもある。
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