1 帰郷

5/35
前へ
/170ページ
次へ
「……反省してないな」 「いやいやとんでもない!」 訝しむ衛兵に、青年は頭を大きく横に振って否定する。 「マジで反省しています!」 そう言って媚びながら衛兵の足元にすり寄り、再び地面と接吻する。しかし、 「足くっさ!」 顔をしかめ鼻を摘まみながら、せせら笑う青年。 思わない反撃に顔を赤に染め激怒をする衛兵は、 「……き、貴様ぁぁぁ! やっぱり反省していないではないか!」 剣を青年の喉元に突き付けた。 しかし青年はそんな怒気に怯まず、さらに次なるパンチを舌のせて放つ。 「さっきから思ったけどおっさんって、息も臭いよね。あ、唾が飛ぶから怒らないで」 「いいぞいいぞ!」 「おう坊主! もっと言ってやれ!」 面白半分で見ていた野次馬は粗野な言葉で囃し立て、彼を中心に収拾がつかず、辺りは混沌としていた。 その時、「パーン、パーン!」と乾いた警告音が騒ぎを制する。衛兵は右手を空に突き上げ魔法を行使していた。
/170ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7456人が本棚に入れています
本棚に追加