プロローグ

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 私は愛原京子(あいはらきょうこ)。高校3年生の女子高生だ。  私の今の生活は、3年間頑張った書道部を7月引退し、世代交代をして、今では、放課後は家に友達と喋りながら帰るといった、ありふれた生活をしている。  今日もいつも通り帰っていた。ただ、いつもと違う事は、独りで帰っているという事だ。時刻は夕方の4時を過ぎている。でも、その時間を過ぎていても外は明るくて、小学生くらいの小さい子供達が、大勢で公園で遊んでいた。  私は、なんとなくその公園へ行ってみた。普段友達と喋りながら帰っている時とは違い、一人の時だとこういうところに気がいってしまう。  私は、公園の入り口の水飲み場に歩いて行った。特に喉が渇いていたわけでもない。ただ、何かに引き寄せられる気がした。その水飲み場には、赤、黒、白の箸が置かれていた。  誰かが置き忘れたのだろうか。周りを見渡してみてもこんな箸を使いそうな人の姿はない。  私は、箸をもう一度見てみた。丁寧に紙に包まれているその箸に、なぜか数字が振られていた。    赤い色の箸の数字は3、黒い色の箸には1、白い色の箸には5。そして、白い箸の包み紙にはこう書いてあった。  『使用回数厳守の事。それを守ればあなたは幸せになる。ただし、1人の時に限る』    この箸は特別な箸だという事はすぐに分かった。おそらく、この箸を使って食事をすると願い事が叶い、願い事の回数が多いほど、叶えられる願いが違うのだろう。  そして、包み紙には驚くべき事が書いてあった。    『この箸はあなたにしか見えていない』  私は、この驚愕の事実に突然、体が痺れたような気がした。この私にしか見えていない箸は一体、何のために私にしか見えていないんだろう。
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