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「でも、あんな数字が出たんじゃ…壊れてんのかな?」
「いや、それはない」
近藤はどこかさびしげな顔でそう言った。
「そういえば、お前の好きな子の名前ってなんだっけ?」
あはははと笑いながらまた、近藤はいつもの能天気な顔に戻った。
「ひなたちゃんだよ。クラスの子くらい覚えとけよな」
わりぃわりぃと言いながら近藤は笑っていた。
さっきの顔はなんだったのだろうか。
それを隠すような明るさがなんとなく痛々しい。
「そういえば、次の時間オープンスクールの係りを決めるらしいぜ」
オープンスクールというのは今年受験を控えている中学生が志望する高校に下見に来ることだ。係りは、二年生の各クラス二名ずつ選ばれるらしい。もちろん僕はそんなめんどくさいことはパスだ。何より妹もこの高校を志望しているので必ずオープンスクールには来る。もし、僕がその係りをしていたら、その日から一週間は夕食の時の話のネタになるだろう。だから絶対にパス!
「近藤はやるの?」
「やるわけねぇじゃんそんなめんどくさいこと。先生はどうせ誰も出ないだろうからって今必死でくじを作ってるらしいぜ」
「40人いるしまあ大丈夫かな」
「お・れ・は、大丈夫だろうな」
?
そして、授業開始のチャイムが鳴った。
「それじゃあみんなも知ってのとおりいまからオープンスクールの係りを決めたいと思います!」
先生の声が教室に響いた。
「どうせいないだろうから、先生はくじを作ってきました!はい、拍手!」
「え~」
生徒たちのやる気のない声とまばらな拍手が起こる。
僕は、どうせ当たることはないだろうと今一番大事なひなたちゃんのことを考えていた。
すると、みんなのやる気とは裏腹に元気のある声で手をあげる生徒がいた。
…近藤?
「先生!俺は葛城を推薦します!」
「「「は?」」」
みんなの頭の上に?が浮かんだ。なんでひなたちゃんがそんなことしなきゃいけないんだ。
「葛城はこのクラスで一番かわいい、だからそういう場面には適していると思います」
かわいいことには賛成だが、言っていることがむちゃくちゃだ。それじゃあひなたちゃんが困るじゃないか。
「そんなかわいいだなんて…」
照れているひなたちゃんもかわいい。
「ちょっとどういうことよ近藤!ひなたが断れないから押しつけるなんて最低よ!」
女子たちの反感を近藤は一斉に受けていた。
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