第1章

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『早川さん??聞いてる?? 専務が来られたみたいだよ。 早川さん、大丈夫??』 えっ、あっ、しまった、 ついつい、一人の世界へトリップしちゃってたよ。 慌てて、 『は、はいっ、大丈夫です。 専務のところへ行ってきます。 では、また、後ほど……』 軽く会釈をして、その場から離れようとすると 『ふっ、ほんと、君って可愛いね。今度、ゆっくり食事でも行こう』 と、桐谷係長…。 えっ、わ、私??と、唖然としてる間に、桐谷係長は出て行かれてしまった。 ハッとして、 こんな事してる場合じゃないっ、 渡辺専務の部屋をノックする コンコン…… 『おはようございます。早川です。失礼します』 渡辺専務の部屋へ入ると 『おっ、おはよう。せっかくの休みに、出勤させてしまって申し訳なかったね。多分、君にとっても勉強になるかなと思ってね。そうそう、今日は、桐谷くんも、一緒に行く事になったから、そのつもりで頼む。』 と。 『はい。ありがとうございます。 勉強させていただきます。 先ほど、桐谷係長からもご一緒される事、伺いました。 本日の会食は《神楽》に席を設けております。 出発は10時半の予定です。時間になりましたら、お迎えにあがります。よろしくお願いします。』 お辞儀をして、部屋を出ようとすると 『優くん、そんなに、畏まらないでくれよ、仕事なのは分かってるんだが…叔父としては、寂しいものがあるよ。それに、そんなに、緊張しなくても、君なら大丈夫だよ。隣には私もいるんだから、リラックスしてくれよ』 と、温かい声が専務から届いたので、私もつい 『叔父様……叔父様とのお仕事の時はいつも頼らせてもらってます。それに、いつも以上にリラックスしてるつもりなんですよ。いつもは、もっと、ガチガチなんですから……』 と言うと、専務は大笑いで 『そうか、そうか、それでもリラックスしてる方なんだな。それは、良かった。 もっと、リラックスしてもらえるように、私も頑張るよ…』 って、馬鹿にされたような、子供扱いのような、専務なりの気遣いをいただき、スーッと肩の力も抜けて、いつもの私に戻れた気がした。 『もおッ、叔父様ったら…… 後ほど、お迎えにあがりますので、よろしくお願いしますねっ』 と、今度こそ、お辞儀をして部屋を後に、秘書課へ戻る。
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