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ーreturn to the “Haruto” sideー
「、ぁ、」
やっと、心が静寂を取り戻して初めて気付いた見知らぬ人の腕の中の景色。
微かに揺れる心は名も知らぬその人への罪悪感だけが漂って ただ、今は謝ることだけが正解だと唇を動かす。
「ごめんなさい…おれ、」
「構うな、
...もう、大丈夫なのか?」
胸を押して離れ様にも、疲労からか力の入らない身体ではどうしようもなくて相手もこの状態を気にならないわけではないと思うが、そのままで居てくれる。
それを春人はありがたいとも、どうしたら…とも思いながら親切を無下には出来ない、と何も言わず顔も見えない状態で話を続ける。
一方の要は腕の中の少年が離れ様にも離れられないのを分かった上でこの状態のまま話しているとも露しらずに。
「でも、」
「いいから。...身体は?」
「だい、じょうぶです…」
「本当に?」
「はい、」
嘘ではない。
現に今も力が入らないほど疲労はしているが心は静寂を保って、発作の後、もう一度眠りにつく恐怖から身体を蝕む苦しさも今は何処かへ飛んで行ってしまっている様な感じがする。
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