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窓から差し込む朝日が部屋全体を包んで、薄い靄のかかった部屋。
その中心のベットの上で膝を抱え俯く春人の姿はどこか、神秘ささえも感じて。
だけどその顔は青白く微かに震えている。
袖口から覗く右腕にはたくさんの傷跡。
傷の深いものも浅いものも、古いものも新しいものも入り乱れるそれはたくさん苦しんだ痕。
「すまなかった」
息を殺し、暗闇から目をそらして宙を彷徨っていただけの目はいきなり聞こえた声と身体を包む暖かな温もりに驚きと同時に安堵を感じる
「...かなめ、さん?」
「気付いてやれなくてすまなかった。早く来てやれなくて、一人で苦しませてすまなかった。
だから、今はこのままで居てくれ」
昨日、部屋をでた後、要は春人のことを気になりつつもソファーで一夜を明かした。そして朝、目を覚まし寝室へ足を運べば、昨夜とあまり変わらない体制で眠っている様子もない春人の姿。
自分の不甲斐なさに苛立ちが湧いて、気付いてやることの出来なかったことに後悔が身を包んで。
「かな、め...さん」
「はる、」
弱々しくも背中に回った腕と小さな水滴に濡れ始める胸元、
「こわかった、...」
小さな小さな囁きとともに震える体をぎゅっと包み込んだ。
もう2度と離さないと誓って
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