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「春、わるい、遅くなった。」
出会ってから早二ヶ月。
強引さの中に多くの優しさを忍ばせる要の起こす行動は、春人の周りに張り巡らされた何重もの壁を容易く、すり抜けて。
仲良くなるのはそう、難いことでもなく
二人の関係は当たり前のように速度を増して変化していく。
「まってない…から大丈夫です、」
“ご飯を食べに行こう”
と誘われた今日も当然のように大学の前まで車で迎えに来てくれて。
申し訳ない、と何度伝えても“誘っているのはこちらだから”と、
「ありがとう。
さて、何食べたい?」
「…あのっ、」
「ん?」
「今日は俺の家に来ませんか?いつものお礼と、感謝を兼ねて…。」
「あの、嫌ならほんとに…」
目を見開いたまま動きを止めた要に
断りにくい事を言ってしまったと、心が冷たくなってすぐに断れるようにと言葉を紡ぐ。
「おれ、今日は中華たべ」
「ほんとうに?」
「え?」
「本当に君の家へ案内してくれるの?」
「…要さんさえ嫌でなければ、」
「嫌だなんてかけらもおもってるわけないじゃないか。
ぜひお邪魔させてはくれないか」
ぼーっとしていたのはどこに行ってしまったのか目を輝かせはしゃいだような要に否定されなかったことが本当に嬉しくて。
「はい、ぜひ家にいらしてください。」
柄にも無くそんな事を口走っていた。
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