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昨夜…と言っても明け方まで交わっていた体は酷く重く、起きることを拒否するかの様に微睡む中
カチャリ、
ちいさな音が部屋に響いて意識がやっと浮上する。
「悪い、起こしたな…」
ネクタイを緩めた姿でドアの近くに立つ要(かなめ)を視界に捉えるとすぐに合わさる視点。
たった数時間前の気だるさも感じ取らせず、またどこか清々しささえ感じる。
もうそんな時間なのか、と時計を確認するといつもはとっくに起きて見送りをする時間。
「ごめんなさい、朝ごはん…」
「構わない。
行ってくる。
遅れるなよ はる、」
そっと唇を落とされた時、首筋に香る仄かな香水の匂い。
「…はい、気を付けて」
その言葉に少しだけ口角を上げ、髪を梳かれると離れる体温。
カチャリ、
今度はっきりと耳に届いて視界から姿が消える。
寂しくなって引き止めてしまいそうになった手はちゃんと留めることが出来た。
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