第0章

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世間一般では平日、と呼ばれる今日。 要も春人も例外なく学校や仕事がある。 大学へ行く準備をしなければならないのは重々承知の上。 昨夜の痕跡を残した身体は起きてすぐに比べれば少しは良くなったはずなのにその体は時間が経つに連れ重くなっていく気がする。 行きたくない…と呟いた声に反応してくれる声も今はもう居なくて 無意識の中で癖になってしまったピアスの穴を爪で抉る行為はポタポタ、と垂れはじめる血にも気付くことなく。 そんな風に過ごした5分あまり。 失われていく表情を引き止める様に響いた小さな機械音にピクリと体を震わせ落ちかけた意識をもう一度浮上させると 「ぁ、」 気づいた時には時すでに遅し。 手は血だらけに染まり、ベットシートも点々と着いた血で染めあげている。 「...ごめんなさ、」 微かに震え始めた指先から全身へと広がって震える身体を抑え込む様に自分自身に回した腕。 ぎゅっと握りしめて肩を抱いているのに震えは酷くなる一方で。 「かなめ、さ...」 届くはずのない声を絞り出す。
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