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「かなめ、さ...」
会いたくて堪らない。
その大きな腕で包み込んで欲しい。
震える体は1人ではどうしようもなくなって、叶わぬ願いを唱え続けていた時、微かに香った嗅ぎなれた香り。
「...はる、」
温かい体温とともにその匂いに全身を包まれた気がして
持ち上げた顔に届いたのはあの人の温もり。
なんでここに居るのかは今は頭になかった。
ただ、傍に来てくれたことが嬉しくて
「かなめさ、かな、め…さん、」
何度も何度も名前を呼ぶ声に応える様に落とされる唇にいつの間にか1人では決して止めることの出来なかった
震えがだんだんと収まって
「ふぅ、」
安堵からか、息継ぎのためか、深く吐きだした息。
やっと、全身から力が抜けて、それと同時に恥ずかしくなって、それでも不安は拭いきれなくて
首元に顔をうずめる様にしてできる限りの隙間を無くす。
その不安を感じ取った様に何も言わずに晴人の好きな様にさせてくれて。
「遅くなって悪かった、はる。
もう、大丈夫だから安心しろ、俺はここにいる」
優しい重低音の声は心をひどく安心させる。
首筋に埋めたいつもより濃い要さんの香りも相まって、荒れた心は静寂を取り戻してふと、浮かんだ疑問。
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