68人が本棚に入れています
本棚に追加
「しごと…なんで、?」
「電話がなっていただろう?
忘れたのに気付いて取りに来た、」
リビングの方から聞こえていた機械音は携帯の音だったのか、と初めて気付く。
“取りに来た”ということはまた、行ってしまう。
そんな事は当に承知の筈なのに
離れたくない、
想いが全身を支配してまた、微かに震えはじめる身体。
迷惑をかけてしまうのは嫌なのに。
自分の意思では止めることが出来ない。
だから、バレてしまうちに離れなきゃいけない
「…いってらっしゃい、」
そっと肩を押して隙間を開ける。
少しだけ震えてしまった声は気づかれずに済んだのか分からないけれど。
ばれてしまうのが嫌で俯いた顔を上げることが出来ない。
だから、早く行って
願った想いが届いたのか離れていく体温。
ぎゅっと瞑った目に数十秒たったころ、
「はる、」
不意に呼ばれた名前に顔を上げると何故だか春人の洋服を持った要の姿が見えて。
「一緒に来てくれないか?はる」
手を広げた要の腕の中に、
一も二もなく、ぎゅっと飛びこんだ。
最初のコメントを投稿しよう!