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「おはよう!ウサミ!」
誰?私のウサミに話しかけているのは。お母さん?
私のぼんやりとする視界が晴れてきて、私を覗き込む顔を見た。
え?なにこれ。私?
「あ、元、美々だっけ?」
私の顔がニヤニヤといやらしく笑った。
私は状況が理解できなかった。
「美々がいけないんだよぉ。ウサミを捨てようとか思うからぁ。ウサミ、美々のこと、すごく助けたよね? 美々の愚痴をすごく聞いてあげたのに、捨てるとか酷くない?だからあ、今日から私が美々になるって決めたの。」
ウソ!私は、動かない体を見た。
ふわふわした白い毛。
私が?ウサミになった?
「美々~?今日は学校、行くんでしょー?ご飯、食べちゃいなさーい。」
下からお母さんの声がする。
お母さん!助けて!
声にならない。
「はぁ~い。」
代わりにウサミが答えた。
「じゃあ、ウサミ、行って来るね。」
そう言うと、美々になったウサミが私のホッペにキスをした。
あれから1ヶ月が過ぎた。
「ねえ、ウサミ!見て見て!中学校の制服!ちょーかわいくない?
それとさあ、中学校に行ってびっくり!柳原君が帰ってきてたんだよ!
やっぱり柳原君もバスケやるらしいから、私もバスケ部にするつもり!」
ウサミはスカートをこれ見よがしにヒラヒラさせて、くるくると回った。
「ねえ、ウサミ、学校って楽しいね!お友達たくさんできちゃった。
それとね、柳原君に告白されちゃった!」
私はウサミ。
どんなに悲しくても涙を流すこともできない。
縫いぐるみだ。
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