17人が本棚に入れています
本棚に追加
私の隣は、ツインテールに髪の毛を束ねた可愛い女子だった。
「私、この組の学級委員長の長田由真よ。よろしくね。」
女の子はにっこりと微笑んだ。天使みたい。
「なんだよ、長田。お前には聞いてねえんだよ。」
下卑た笑いをやめずにその男子は言った。
「バカだからバカって言ったんじゃん。アンタちっとも面白くないんだよ!
アンタの言うこと、ちょーつまんない。」
そう彼女が言うと、みんながどっと笑った。
私のこと、庇ってくれたの?
私は嬉しくなった。
みんなに笑われて、恥ずかしくなったのか、その男子は
長田さんを睨みながら、自分の席に戻って行った。
どうやらこのクラスでは、仲良くやって行けそうだ。
「ありがとう。よろしくね。長田さん。」
私が小さく言うと、由真って呼んでいいよと言ってくれた。
その日の放課後、別の男子が声をかけてきた。
私は男子が苦手で、今度は何を言われるのかと身を硬くした。
「宇佐木さんって、背が高いね。何かスポーツしてたの?」
そんなことを言われて、私はしばらくポカンとしてしまった。
男子というものは、意地悪いことしか言わないと思っていたから。
その男子は、私と同じくらい背が高くて、中学生のような大人びた雰囲気を醸し出していた。
カッコいい。そう思った瞬間、私は顔が熱くなるのを必死で隠そうと俯き加減に首を横に振った。
「ええ?そうなの?背が高いから何かやってたのかと思った。勿体無いな。
バレーとかバスケとかやったらいいのに。」
私は男子の名札を盗み見た。
「柳原 竜馬」
りょうま君。心の中で呟いただけでドキンとした。
「わ、私には、出来ないよ。」
情けない声が出た。
「そんなの、やってみなきゃわかんないじゃん。そうだ。俺、ミニバスやってるんだけどさ。
見学に来ない?」
男の子にそんなふうに声を掛けられたことなんて無くて、私は舞い上がってしまった。
背が高くて得したことなんて無かったけど、こんなこともあるんだ。
「うん、見学くらいなら。」
自分の勇気がしばし信じられなかった。
その日私は何もかもがうまく行きすぎて浮かれていた。
「ねえ、ウサミ。私、今度の学校ではうまくやっていけそう!」
そう言うとウサミをぎゅっと抱きしめた。いつもにも増してウサミはふわふわで良い匂いがした。
最初のコメントを投稿しよう!