ウサミ

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きっとお母さんがウサミを柔軟剤の入った洗剤で洗ってくれたんだ。 転校するたびに暗く陰鬱になっていく自分に嫌気が差していた。 今度こそ。私は希望で胸が膨らんだ。 ところが次の日、登校するとあるべき所に、私の上靴が無かった。 確かに靴箱の上段に入れておいたのだ。よその靴箱に間違えて入れたのかと思い、 確認したが、私の上靴はどこにもなかった。私の胸に以前経験したような真っ黒な不安の霧が立ち込めた。 仕方なく上靴無しで、教室にこっそりと入り、一日他の人に気付かれないようにした。 給食の時間になり、私はトレーを持って、給食をよそってもらい、自分の席に戻ろうとした。 自分の席に着く瞬間に、後ろで派手な音がして振り返った。 長田さんの牛乳瓶が、下に落ちて割れていた。もしかして、私が倒してしまったの? 「もしかして、私が倒してしまったの?ごめんなさい。」 私がそう謝ると、長田さんは、 「いいのいいの。大丈夫だから。気にしないで。」 と言った。 「でも、今日、飲むものが・・・。私ので良ければ。」 と自分の牛乳を差し出した。 「いいよ、いいって。私、今日ミニバスの練習あるから。お茶持ってきてるから大丈夫だよ。」 そう言って笑った。なんていい人なんだろう。 私はせめて雑巾とバケツを持ってきて、破片を拾い集め、後片付けをした。 その様子を見ていた、一人の女子が私に忌々しそうに舌打ちをした。 「ホント、あんたってトロいよね。見ていてイライラする!」 そう吐き捨てられて、私は驚いて見上げた。 小学生なのに、髪の毛が明るい栗毛色で、お化粧をしているみたいに目が大きくて睫の長い大人びた女子だった。 まだみんなの名前を覚えていない。思わず名札を見た。 「佐々木 留美」 ちょっと怖そう。 長田さんが留美が去って行ったあとに、私に耳打ちしてきた。 「気にしちゃだめよ。あの子は不良なのよ。噂じゃ高校生と付き合ってるらしいよ。 それにね、お父さんは暴力団関係の人らしいから。あまり関わらない方がいいよ。」 そうなんだ。怖そう。あまり近寄らないようにしよう。 「ところで美々、今日は上靴はいてないね?どうしたの?」 長田さんに見られてしまった。恥ずかしかった。私はウソをついた。 「わ、忘れちゃった。」 「やだ、美々ったら。結構ドジね。」
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