17人が本棚に入れています
本棚に追加
美々って。初めて友達から下の名前で呼ばれた。嬉しい。
その日、私は柳原君に誘われたミニバスの練習の見学に行った。
長田さんも、同じミニバスのチームなんだ。
男子と混合とは珍しい。柳原君と長田さんは、とても仲が良さそうだった。
そう言えば柳原君はうちのクラスの学級委員だっけ。
学級委員でも一緒。ミニバスでも一緒。なんだかお似合い。
そう思うと心のどこかで寂しさを覚えた。
何、期待しちゃってたんだろ、私。
背が高いってだけで、呼ばれたに決まってるじゃん。
コーチの人に、一緒にやってみないか、と誘われた。
ドリブルや、シュートを教えてもらい、初心者だけど、割とすんなりとシュートが決まった。
「凄いじゃん、宇佐木さん!」
柳原君が私にハイタッチしてきた。
私はその日、スキップして帰りたいくらいに浮かれていた。
「ウサミ!私、バスケやるかも!」
早速ウサミに報告してぎゅっとウサミを抱きしめた。
最高の気分。自分に少しだけ自信が出てきた。
あくる日、学校に行くと、上靴がちゃんと自分の靴箱に戻っていた。
なんだ、誰か私のを間違えてはいてしまって、気付いて戻してくれたんだ。
私は安堵した。
「いたっ!」
私は上靴をはいた瞬間、チクリとしたので、慌てて上靴を脱いだ。
すると私の足の親指に画鋲が刺さっていたのだ。
念のためもう片方も確認してみると、やはり画鋲が入っていた。
酷い。誰がこんなことを。
私は昨日のことを思い出していた。 「見ていてイライラする。」
そう言って私を睨みつけた女子を思い出した。佐々木留美。
もしかしたら、あの人が。私の中に留美に対する小さな疑念が沸いた。
その日から、私の周りでは少しずつおかしなことが起こった。
持って来たはずの、コンパスがなくなっていたり、ランドセルに覚えの無い
擦ったようなヨゴレがついていたり。消しゴムに画鋲がたくさん刺さっていたこともあった。
明らかに故意に誰かが私の持ち物に悪戯をしているのは明白だった。
この学校ではうまくやっていけると思ったのに。でも、このクラスにそんな酷いことをする人間の心当たりがない。あるとしたら、あの初日に恥をかかされた男子か、もしくは・・・留美。 佐々木留美に対する理由の無い疑念は晴れなかった。
そもそもあの日、何故理由無くイライラするなどと言われたのかもわからなかった。
最初のコメントを投稿しよう!