ウサミ

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そんなある日、給食の時間のことだった。私は4時間目が終わり、給食の前にトイレに立ったのだ。 「やめなよ!くだらない!」 教室に帰ると、留美の大きな声が響いていた。留美の手が長田さんの手を掴んでいる。 揉め事?私は教室に入るタイミングを失っていた。 「はあ?何?」 長田さんが笑いながら留美を見上げている。 「今、給食ん中に何か入れただろ。お前。」 留美がそう言うと長田さんが目を剥いた。 「入れてませんー。バッカじゃねえの?」 「そっか。何も入れてないんだ。じゃあ、お前のと取替えろ。」 そう言うと、私の食器と長田さんの食器を取り替えた。 すると、長田さんはウッと言葉に詰まった。 いったい何が起こってるの?どうして私の食器が? 私は嫌な予感に心臓が早鐘のように鳴った。 「食え。」 留美が低い声で長田さんに促す。長田さんは黙っていた。 「何も入れてねーんだろ?食えよ。」 皆がしんと静まり返り、行く末を見ている。 すると長田さんはシクシクと泣き出した。 「ごめんなさい。ごめんなさい。」 そう繰り返した。私は、信じたくない事実を目の前に突きつけられてショックを受けていた。 私はその日、早退した。 今までのことは、たぶん全部長田さんの仕業なんだろう。 「せっかく友達ができたと思っていたのに。」 私はその日、ウサミに顔を埋めて泣いた。 その日の夕方、留美が私の家を訪ねてきた。 私は、留美のことをいろいろと誤解していたようだ。 ぶっきらぼうな留美は一見怖そうだけど、実にサバサバとした性格だった。 男の子みたい。そう思った。 「なんかさ、ネチネチと陰険な悪戯ばっかしてさ。アンタ、それに気付かないし。ずっとイライラしてたんだよね。あの牛乳の時だって、あれ、あいつがわざと倒したんだよ。あいつ、牛乳が大嫌いなんだよ。でも残したら担任のババアがうるさいだろ? 陰でコソコソやりやがって。顔に似合わず、えげつないんだよ、あの女。アンタに意地悪してたのだって、あれはたぶん柳原がアンタに接近したから、 嫉妬したんだよ。くだらない女だよ、あいつ。」 留美はマシンガンのようにまくし立てた。きっと正義感が強い子なんだ。
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