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「ウサミ、留美は良い子だったよ。私、誤解してた。
しかも、留美のお父さんが暴力団ってのも、高校生と付き合ってるってのも、
全部長田さんのウソだったんだよ。酷いよね?」
私は相変わらず、ウサミに全てを報告しなければ気がすまなかった。
子供っぽいと思うけど、ウサミは私の全てを受け入れてくれる、大切な友達。
そして、心配してたずねてきてくれた留美。お友達になれたらいいな。
私はウサミに密かに願い事をした。
願った通り、私と留美は友達になれた。
その代わり、他のクラスの人からは無視された。
たぶん、長田さんが、皆にそうするように命じたのだろう。
ただし、柳原君を除いては。彼は誰に対しても公平だった。
その後柳原君は、よその学校に転校してしまったので、
やはり私と留美はクラスで孤立していた。
でも私は平気だった。留美がいるし、長田さんも留美が怖くて私には何も手出ししてこなくなったから。
中学生になれば、またクラス替えもあるから、別になんとも無い。
その頃の私は、留美といるのが楽しくて仕方なかった。
やっと親友と呼べる人ができたのだ。
その頃の私はもう、ウサミに話しかけることはなくなっていた。
ウサミは棚の上で埃にまみれて薄汚れていた。
小学校を卒業とともに、私は部屋の整理をしていた。
小学校の思い出なんて、ほとんど良い思い出はなかったので、私はほとんどのものを処分した。
そして、ウサミが目についたのだ。
私もそろそろ、ぬいぐるみに話しかける年でもないよね。
でも、ウサミにはいろいろ相談したしなあ。
しかし、ウサミは薄汚れ過ぎて、新しい気持ちで生活をスタートするには、あまりにも
過去の惨めな思いを思い出させすぎる。
「明日、燃えるゴミの日だっけ。」
私はそう呟いて、床についた。
朝目覚めると、体が異様に重かった。
熱を測ると、38度あった。
「病院に行こう」と母に言われたけど、起き上がるのも億劫なほど体がだるく、寝ていれば治ると言って、大丈夫だからと仕事にでかける母を見送った。
あ、燃えるゴミ。ま、次のゴミの日でいいか。
私はそのまま、深い眠りについた。
何時間眠ったのだろう。
私は、目覚めて体を起こそうとした。
あれ?体が。動かない。
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