ウサミ

7/8
前へ
/8ページ
次へ
「ウサミ、留美は良い子だったよ。私、誤解してた。 しかも、留美のお父さんが暴力団ってのも、高校生と付き合ってるってのも、 全部長田さんのウソだったんだよ。酷いよね?」 私は相変わらず、ウサミに全てを報告しなければ気がすまなかった。 子供っぽいと思うけど、ウサミは私の全てを受け入れてくれる、大切な友達。 そして、心配してたずねてきてくれた留美。お友達になれたらいいな。 私はウサミに密かに願い事をした。 願った通り、私と留美は友達になれた。 その代わり、他のクラスの人からは無視された。 たぶん、長田さんが、皆にそうするように命じたのだろう。 ただし、柳原君を除いては。彼は誰に対しても公平だった。 その後柳原君は、よその学校に転校してしまったので、 やはり私と留美はクラスで孤立していた。 でも私は平気だった。留美がいるし、長田さんも留美が怖くて私には何も手出ししてこなくなったから。 中学生になれば、またクラス替えもあるから、別になんとも無い。 その頃の私は、留美といるのが楽しくて仕方なかった。 やっと親友と呼べる人ができたのだ。 その頃の私はもう、ウサミに話しかけることはなくなっていた。 ウサミは棚の上で埃にまみれて薄汚れていた。 小学校を卒業とともに、私は部屋の整理をしていた。 小学校の思い出なんて、ほとんど良い思い出はなかったので、私はほとんどのものを処分した。 そして、ウサミが目についたのだ。 私もそろそろ、ぬいぐるみに話しかける年でもないよね。 でも、ウサミにはいろいろ相談したしなあ。 しかし、ウサミは薄汚れ過ぎて、新しい気持ちで生活をスタートするには、あまりにも 過去の惨めな思いを思い出させすぎる。 「明日、燃えるゴミの日だっけ。」 私はそう呟いて、床についた。 朝目覚めると、体が異様に重かった。 熱を測ると、38度あった。 「病院に行こう」と母に言われたけど、起き上がるのも億劫なほど体がだるく、寝ていれば治ると言って、大丈夫だからと仕事にでかける母を見送った。 あ、燃えるゴミ。ま、次のゴミの日でいいか。 私はそのまま、深い眠りについた。 何時間眠ったのだろう。 私は、目覚めて体を起こそうとした。 あれ?体が。動かない。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加