芽生える

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 母が死んでから半年後。四十九日もとうに過ぎて、既に母がいない日常にも慣れてしまった。そんなある春の日のこと。    その日校門前は、入学式を終えたばかりの新入生とその保護者で混雑していた。   満開の桜の木の下で、入学式の記念撮影をする幸せそうな家族たち。  ちょうど一年前、わたしもここで母と写真を撮った。それが随分、昔のことに思える。  そんなこと考えた次の瞬間、ある一組の家族が目にとまった。  息が――止まるかと思った。 「紗己子? どうしたの」  泉の声で我に返る。  友人は、急に立ち止まってしまったわたしを不思議そうに見ていた。 「ううん。なんでも」 「かっこいい新入生でもいたんじゃないの?」 「まさか。初々しいなあって、思っただけだよ」  そう言って軽く微笑んで見せれば、泉は納得したように頷いた。 「確かにいいよね。なんかみんな可愛くて」  入学式の後、新入生とその保護者で混雑する校門前をすり抜けて、わたしたちは駅までの道を歩き出す。  わたしは、泉に見えないように一度だけ振り返った。  間違いない、あれは父だ。  父とその愛人と、二人の間に生まれた息子。
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