狐と狸の入学

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 ◆◆◆  いよいよわたしの高校生活がスタートするわね。勉強にスポーツはもちろんのことだけど、困っている人に優しく手を差し伸べて厚い人望を獲得し、学校一の有名人になってやる。  そして、一番外せないのは謎解きね。そんな簡単に謎は現れはしないだろうけれど、それを解決できた時の注目度は凄まじいから。  中学時代。あの事件を解決した時の快感とみんなの羨望の眼差しが忘れられない。高校では積極的にトラブルなどに首を突っ込んでいこう。  目立って目立って目立ちまくる。それがわたしのモットーだ。他人の羨望や畏怖な視線を感じるとなんだか嬉しくなってしまう。昔からの体質だ。  友達はそれについて「痛い体質ね」と言っていた。わたし自身もそう思うし、実際痛いだろう。  けど、あの快感はこの体質になってみないと分からない。心の中でなにかが打ち上げ花火のように破裂して、一気に高揚感が心を浸食する。思い出すだけで鳥肌ものだ。  そんなことを思っていたらいつの間にか学校に到着していた。  正門のすぐ横には『第七十回名善高校入学式』と、達筆な筆字で書かれた看板がある。周囲には学ランとセーラー服を身にまとった新入生たちが溢れ、がやがやと騒々しく校内に入っていく。  これがわたしの高校生活の第一歩だ。校内に足を踏み入れると、他の新入生が集まる昇降口の近くに足早に進む。そこで所属クラスを見る。  どうやらわたしは一年D組のようだ。そして同じクラスに、友人の名前も見つけた。  この後はまずクラスに移動して体育館に向かう。……そして話を聞いて教科書をもらって帰宅、という感じた。  本番は明日から。どんな謎に会えるのか、いまから楽しみだ。
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