トリプル・ブラインド

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 高校の入学式は極普通だった。担任の自己紹介。校長先生の長い話。強いて言えば、教科書が重くて持って帰るのが大変だったくらいか。  昇降口の近くに貼ってあったリストのB組に狐島(こじま)勇人(ゆうと)の名前を見つけ、B組に乗り込んだ。  教室では既に中学からのつき合いと思しきグループが数組できあがっていた。当然おれの知り合いはいないため、ただ黙って座ってジッとしていたらいつの間にか終わっていた。  そして今日が入学から初の登校になる。朝六時起きだ。  和菓子屋に勤めている母親と中二の妹はまだ寝ていた。父親は北海道に単身赴任中だ。  おれはテキトーにパンをかじり、駅へと出掛けた。  昨夜は眠れたが、まだ緊張はしていた。  ◇  何人かの生徒に紛れながらおれは一年の昇降口に入った。  ロッカーの小さな扉を開け、新品の……というより学校指定の上履きを履き、一年のクラスがある二階へ上がるべく階段へ向かおうとしたとき、  「……ん?」  掲示板を発見した。昨日は緊張しすぎて視界に入っていなかった。  掲示板には大小様々な部活勧誘のポスターが、所狭しと貼られている。一年生が最初に目にする掲示板だろうから、当然と言えば当然だ。  部活、か……。  普通の青春──normal blue springを送りたいおれとしては無視できない。  取り敢えずこの掲示板に貼られているポスターからなにか探してみる。  放送部、文芸部、手芸部、吹奏楽部、合唱部、化学部、調理部……文化部多いな!  文化部は人気がないのかもしれない。運動部はほっとけば誰かしら入ってくるだろうけど、文化部はそうとはいかないだろうし……。だから新入生が最初に目にする掲示板にこんなに集まるんだろう。  ほら、この食品サンプル同好会とか、誰が入るんだよ。……いやでも、一周回って入りたいかもしれん。入らんけど。  けどまぁ、運動部には入りたくない。全国大会出場とか、そんなスポ根漫画みたいな青春はゴメンだ。  でも同性で同級生の友達が欲しいんだよなぁ……。  やっぱ運動部じゃないと難しいよなぁ……。  バスケットボール部が強いらしいけど、おれ身長、一六七と低いしなぁ……。  ま、じっくり考えりゃいいか。  そう決心して、おれは階段を駆け上がった。
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