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小学五年から不登校だっただけあって、全六時限の授業を受けるのは中々にキツかった。
入試を合格できたのはそこまで高くなかった倍率と、幼なじみが勉強につき合ってくれたこと、そしてほぼ徹夜の詰め込みのおかげだ。
入試のための勉強しかしていないおれには、少しきつかった。……でもまだ一番最初の単元だ。これで躓いていては、自分の受験勉強を顧みずおれに勉強を教えてくれた幼なじみに申しわけが立たない。
そして大切な友達についてだが、もちろんまだいない。一体全体、誰になにを話せばいいのか分からないのだ。クラスの男子は漫画やらアニメやらスポーツの話で盛り上がっているけれど、ミステリ小説や推理ドラマ以外殆どなにも読まない、見ないおれには付いていけない。
色々と今後の課題が浮き彫りになった放課後。おれは先生から渡された校内のマップと部活の一覧表を見て校舎内を探検している。
校内は窓から差し込む橙色の光で満ちており、この光景を見るのが小五以来だと思うと、より神秘的に見えてくる。
この学校は旧校舎と新校舎があり、一階から四階のそれぞれに渡り廊下が設置されている。一年の昇降口と教室は旧校舎にある。それから一覧表を見るに、文化部の部室は新校舎に集まっているようだ。
朝から色々考えたが運動部はキツそうだし、だいいち、おれは引きこもっていたわけではないにせよ、不登校で体育をしていなかったから運動不足なのだ。
……付いていける気がしない。なので運動部はやめておきます。
文化部に入るとしても何部にしようか。見学とかしたいけど、部活が始まるのは明日からだ。そして入部の希望は二週間後。その間に各部活は、新入生歓迎会でプレゼンをしたり、勧誘をする。
別に部活への入部は強制じゃないから帰宅部もありだ。……まぁ、おれの場合、そんなことしたら寂しい高校生活を送るのが目に見えているから、絶対に入部するけど。
もう一度、部活一覧表に視線を巡らす。こうしてみると中々に部活が多彩だ。運動部は十七種。文化部は三十三種。
文化祭が結構盛り上がると聞いていたが、これだけ部活があれば納得だ。
なにかよさげな部はないものか……ん? ミステリ研究会だと!?
そんな部があるのか! 決めた。おれここに入る。
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