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ただでさえよれよれとしてしまっている紙を、何度も折り直す。その度に何となく違う気がして広げる。その繰り返し。紙はどんどんよれていく。どうやって折っても皺ができてしまうほどの汚い。
本当に涙が溢れそうになって――不意に、駄菓子屋さんのおばあちゃんの言葉が頭を過ぎった。
――大丈夫よ、落ち着いて。すぅーってして、はぁーってしてごらん?
すぅーっとして、はぁーっとする。深呼吸。
教わっても上手く出来なかった時にくれた、穏やかで優しい声。
不器用に深呼吸をしながら、幼い少女は紙を折っていく。恐る恐る。でも、確かに作り方を思い出しながら。
しばらくそうして、出来上がった紙ひこうきを見つめる。
感想は、なんか違う。
元通りにはできなかった。でもきっと飛ぶに違いない。飛べば大丈夫。何がなのかはよく分からないが。
幼い少女は、放り投げるような勢いで腕を振る。
足りない分は自分が力になるとばかりに。
どこか歪な紙ひこうきはふわりと舞い上がり――唐突に吹いた風に乗った。
空高く、紙ひこうきは飛んでいく。
その様子を、わあっ、と歓声を上げて幼い少女は笑顔を溢した。
どこまでも飛んでいけとばかりに両手を掲げ、やがて視界から消えるまで、ずっと紙ひこうきを見送った。
『大切な人のところまで飛びます』
元通りにして置いておく、という当初の目的は、完全に忘れてしまっていたのだが。
…………
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