3人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
あれは確か…6月の下旬頃だった。
赤点ギリギリの現国のテストや赤点課題と一緒に返ってきた数Ⅱのテスト。
どれもこれも"赤点"というワードに引っかかって担任に呼び出しを食らった。
大嫌いな担任に呼び出されてかなりすねすねモードの僕。
言われた内容は案の定、"単位取れないぞ"と"やれば出来るのだからやりなさい"。
うん。僕の大嫌いな言葉だ。
担任から開放されたのは辺が夕日に染まった頃だった。
部活を頑張る生徒たちの声を右から左に受け流しながらさっそうとチャリ置き場に向かう。
雨風にさらされて錆びた可哀想なカゴにボロボロのスクバを放り込む。
つまらない学校がやっと終わった。
さっさと帰って、手洗いうがいして…オナニーしよう。
オナニーしたらまた手洗いして歌お。
そう。これが僕の日課。健全な男子高校生なんてこんなもんじゃないのかな?
とびきり都会でもなくど田舎というわけでもないプチ田舎のアスファルトの道をチャリで走る。
丁度、会社員の帰宅時間とかぶったせいで車の通りが多い。
青に変わってもなかなか渡れない横断歩道。
ムカツク。
"さっさといけよ車"と思ったその時だった。
真っ黒のチャリンコに乗った明るい茶髪の青年が僕の後ろを通り過ぎた。
"好きって言えたら今はこんな…"
甘く切ない歌声が僕の心を縛り付けた。
何なんだ…この声は…
僕はすぐさま"彼"の方へ目をやった。
グレーのパーカーにスキニーのジーンズ。黒と青のハイカットのスニーカー。
ふわふわの少し長めの茶髪。かっちりとした肩。
…かっこいい。
僕は"彼"から目を離すことが出来なかった。
最初のコメントを投稿しよう!