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「うーん、先生、このテリーヌ最高です」
銀座の超高級三ツ星レストランである。
今回一番の功労者だということで、先生の奢りで高級フレンチのご馳走になっていた。
私は部屋の片づけも無事に終え、そこで久し振りにお目見えしたプラダでドレスアップだ。
型も古いし私には少し派手かと思ったが、ときめくんだからいいのだ。
片付けのカリスマもそう言ってる。
「そりゃよかった」
無駄にイケメンな先生は、細身のアルマーニでキメている。
悔しいがカッコいい。
「先生、本名タカシっていうんですね」
「そうだけど?」
「ぶふ、10才下のうちの弟と同じ名前です。次々に吹き出すニキビが目下の悩み事」
「うわ~、聞きたくなかった~」
「あはは」
「でもさ、あそこで子ども用のビニールプールを出すとは、さすがの俺も思わなかったな。なんでビニールプールなの?」
不思議そうにそう聞かれて、あの時のことを思い出しながら答えた。
「それは……、プロのレスキュー隊が使うあの巨大なエアマットはテレビでしか見たことないし、それならプールだと思ったんですけど、大きすぎてダメだと思ったので、あいだを取って子ども用ビニールプール? ほら、水と空気の両方で受け止められますし」
「……なるほど。なんで水と空気の両方必要だと思ったのか謎だが、俺なら、布団とかマットレス百枚にするな」
「ああっ!」
私には思いもよらなかった先生の理にかなった考えに、思わず声が出た。
「由布子が助かったのは本当に奇跡だな……」
「すみません……」
思わずしょんぼりと肩を落とした。
「……でもまぁ、さっきは布団なんて言ったが、正直俺はあの時、あいつをやっつける武器があればとしか思わなかった。でもキミは、人の命を救うことしか考えなかった。その優しい発想が、結果的に由布子の命を救った。キミは彼女の命の恩人だ。このことを俺しか知らないことが残念だが、彼女に代わって礼を言うよ。ありがとう」
先生が深々と私に頭を下げた。
「どどどど、どーしたんですか、先生! やめてくださいよ!」
常にない先生の様子に、私は大いに戸惑い、思わずワインをがぶ飲みしてしまった。
ドラマの中のようなこのシュチュエーションも相まって、頭がクラクラする。
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