第1章

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家を出ていくらも歩かないうちに、エコバッグの中が急にずしっと重くなった。 大した重量ではないが、財布しか入っていないはずだ。 なんだろうと中を見ると、そこにはまたしても、先ほどの三品と追加したシラタキと焼き豆腐が入っていた。 「うわっ」 道端で思わず声が出た。 シラタキと焼き豆腐と砂糖がエコバッグに直に入っていたからだ。 脆い焼き豆腐が崩れ、シラタキの水気に砂糖が溶けだし、それらが全部グシャグシャに混ざり合い、バッグの中は悲惨なことになっている。 慌てて家に帰り、バッグの中身を取り出してきれいにしたが、頭の中はクエスチョンマークで一杯だった。 「あら、あんた何やってるの? どうしたのこれ?」 母が呆れたように目を丸くしている。 「わかんない。家出てすぐにバッグがこうなった……」 わけのわからないまま、バッグを掃除する私の手に、さきほどのメモ紙が触れた。 それは、バッグの中の被害を免れ、かさかさと乾いて黄ばんでおり、なぜか白紙のままだった。
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