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「あのね、結婚したらさすがの俺も編集部には報告するよ。ちなみに恋人でもないから」
「あ、じゃあやっと秘書雇ったんですか? いやー、あんな美人さんが秘書だなんて、なんか仕事するのが楽しくなっちゃいますね!」
「キミはオッサンか。残念ながら秘書でもない。イトコだ」
「は? イトコ?」
「そ。まぁ、色々あって、二週間ほどうちに滞在することになっただけだ」
「ふーん、そうなんですか」
「それより、早速お金をやってみよう」
先生が再び紙を手にしようとしたが、私は慌てて阻止した。
「ダメです!」
「なんで?」
私は黙って自分のスマホ画面を先生に向けた。
そこには、店長がやっとの思いで購入したという、とあるアニメ専門店に飾られた限定版の120㎝のロボットフィギアが、忽然と姿を消したというネットニュースの見出しが躍っている。
日付は、私がこの紙を発見した次の日だ。
「……これが?」
先生がなんの話しだというように私を見た。
「私の仕業です」
「は?」
「だからですね、かねがね欲しかった限定版ロボットフィギアを紙に書いてみたわけです」
「キミ、そっち系!?」
「そ、そこじゃなくて、つまり、この紙は確かに魔法を使えますが、そこに現れるものは、どこかにあったものをここへ右から左に持ってくるものだったというオチです」
「だから、軽々しく使えないと?」
「もちろんです! 結局は盗むのと同じですからね。ちなみに、シリアル番号見て間違いなかったので、フィギアも返してきました。言い訳が大変でしたけど」
「俺なら気にしないけどね。考えてもみてよ、完全犯罪だよ?」
「ダメです!」
「石頭。あ、それなら、宝石の原石ならどーよ? 砂金とかさ?」
「先生、宝石の原石見たことあります? 仮に見たことがあるとして、どうやって捌くかご存知ですか?」
「まぁ、確かに、現金化するまでが面倒だな」
「ですよね? やっぱ人間、まっとうに働いてこそです」
「キミは俺のばあちゃんか」
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