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「そういうのって、差別じゃないの?」
「え?」
「女だからって、みんなが車に興味ないと聞こえるね。…悪かったね。変な女で。」
「…違う………おい!待って!」
ムカついて、イラついて。
言い放ったあとに走って家に帰った。
静かな部屋で、襲ってくるのは虚しさ。
考えてみたら、そこまでムカつくことじゃない。
なのにどうしてあんなこと言ったのか。
自分が日頃からイライラしているから、完全に八つ当たりだと分かってるけど。
見ず知らずの相手に当たり散らすなど、どれだけ子供だって話だ。
自己嫌悪に陥りながらバイトに向かい、翌日からは情けなくもいつもの道を通れず、別のルートで帰った。
それが一週間ほど続いたある日、学校帰りにコンビニに寄って立ち読みしていた。
ファッションやブランドものや化粧品等、昔から興味がなく、車やバイクばかりが好きで、見るのも読むのもそればかり。
手に取ったものは、セダン車をカスタマイズしたものが載っている"ビップカー"や、走り屋と呼ばれる人たちが見る"ヤングオート"とか"バリバリマシンR"。
(…は。確かに女子高生は見ないか)
軽く自分に引きながら、それでも好きな車を嫌いになることは出来ず。
人目を気にすることなくガン見して。
「……へぇ。こりゃ本格的な車好きだね。」
「!!」
横から声が聞こえた。
香水じゃなく、オイルの臭いがした。
…うん。見ちゃいけない。そんな気がした。
静かに本を戻すと、足早にコンビニを出た。
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