楽しいですか?

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学校の帰り道、いつも通る道にある整備工場に、たくさんの車がある。 真琴は父親の車好きのお陰で、自身も車が大好きだった。 「あ、460だ。やっぱり大きい車だな。…セドグロも揃ってるし!やっぱブロアムよりグランツの方がカッコいいよなぁ!」 整備工場にしばらく立ち止まって、車を眺めて帰宅する。それが習慣になっていた。 中学を卒業すると、早々に家を出て地元から遠く離れた高校に通っていた私。 もう、あの家にいるのは嫌だった。 『条件がある。一年だけだ。いいね?』 どうせなら3年通わせて欲しかったが、優先事項は家を出ることだったため、了承して遠く離れた場所へ赴いたのだ。 初めての独り暮らしに不安などなかった。 寂しいと思うこともなかった。 新聞配達して、学校行って、バイトして。 そうしたことに充実していたのは、自分の目標があったからだ。 「…あ、噂の女子高生。」 「え?」 「こんにちは。」 後ろから声をかけられた。 見ると、汚れたつなぎを着た男の人。 どう見ても、ここのメカニックの人間だろう。 「こんにちは。ここの人ですか?」 「ん。整備士。毎日ここで車眺めてるって、うちの会社で有名だよ。…車好きなんだ?」 「はい。車もバイクも好きです。」 「珍しいね、女の子なのに。」 反抗期真っ只中。 意味なくイライラすることが多い自分。 私はその言葉にカチンと来た。
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