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「お前に、キモオタ言われる覚えはないわ、ブス!腐女子!」
「何よ、キモオタじゃなかったらアンタ何様なの?和也のくせに、生意気よ。」
「お前に名前を呼び捨てにされる覚えはないわ!どこがえりかじゃ!お前はジャイアンか!」
「彼女も居ないくせに!」
「ふん、居るわい、彼女くらい。そういうお前こそ、彼氏居ないんだろ!」
「居るわよ、彼氏。」
やけに余裕たっぷりに柿沢が笑った。
笑いながら、えりかは去って行ったのだ。
まったく、あの自信はどこからくるんだ。彼氏が居るとか嘘ばかり言いやがって。
まぁ、俺の彼女はバーチャルだけどな。そう、俺は和也だけど、偽名ではケントと名乗っているのだ。
写真も名前もデタラメ。
ちょっと罪悪感はある。
数日後、俺はとんでもないものを目にする。なんと、リアル春菜ちゃんが街を歩いているのだ。俺は若干、春菜ちゃんは実は成りすましなのではないかと、疑っていたのだけど、本当にいたんだ。あの子がほとんど毎日、俺相手にあんなことやこんなこと。俺のマイサンが、昼間だというのにヤバイことになってきた。でも、本当の俺がこれだとわかったら、春菜ちゃんガッカリするだろうなぁ。
春菜ちゃんが誰かに向かって笑顔で手を振っている。俺はその手を振っている方向をふと見ると、柿沢えりかも手を振り返していた。
マジか!柿沢えりかと友達!俺はわからないように、二人をつけた。つけてどうしようというのだ、俺。
二人は近くのファミレスに入った。俺は少し時間をずらして、柿沢に見られないように、すぐ隣のボックス席に静かに座った。柿沢はおしゃべりに夢中でまったく俺に気付かない。俺はコーヒーだけ頼んで、ずっと二人の話に聞き耳を立てた。
「あたしね、彼氏、できちゃった。」
柿沢が嬉しそうに、春菜ちゃんに話す。俺はげんなりした。
お前なんか彼氏ができるはずないだろ。嘘つくんじゃねーよ。
「え、そうなの?よかったね!どんな人?」
あれ?春菜ちゃん、若干いつもと声が違うような。まあ、マイクを通してだからな。
「えーっとね、名前は、ケント君って言うんだぁ。」
俺は、ドキっとした。
え?ケント?
「最近、出会ったの。ネットで知り合ったんだけどさぁ。」
う、嘘だろ?
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