不幸の三徴候

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「今年のインターハイに全てを賭けてきたんだ。俺はどんな状況だろうと、勝負を捨てたくない! 頼むから、親父の力を貸してくれ!」 血走った光輝の目が龍二の苦い顔を捉えた瞬間、とても嫌な予感がした。 「すまんが、無理だ。お前を試合に出すわけにはいかん」 「何でだよ!?」 「腫れも痛みも、今までの怪我とは比べものにならないはずだ。靭帯が完全断裂した状態では、技にすら入れないんだぞ。今回だけは、諦めてくれ」 「……ふざけんな!」 咄嗟に光輝が吐き捨てたこの言葉は、一体誰へ向けたものだったのだろうか。 怪我の原因となった下級生か。 それとも、診断を下した医師と父親か。 はたまた、集中力を欠いた自分自身か。 冷静さを失った彼には、わからなかった。
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