不幸の三徴候

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「神山ぁぁぁ!」 再び響いた監督の声に、反応する暇は無かった。 右膝外側に走った衝撃。 直後聞こえたブチッという何かが切れたような音と共に、光輝は畳へ倒れ込んだ。 「おい、マジかよ……」 事故を目の当たりにした、他の柔道部員の動きが止まり、おびただしい熱気に包まれていた道場内の空気が、一瞬にして凍りつく。 「うっ……」 光輝は痛みに顔を歪めながら、下級生の上半身が直撃した右膝を無我夢中で抱え込んだ。 【激痛+不安=絶望】 この時、咄嗟に彼の頭に浮かんだ方程式は最悪なものだった。
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