不幸の三徴候

9/13
前へ
/131ページ
次へ
「痛ってぇ……」 運ばれた病院から自宅までの距離が、さほど遠くないことは幸いだった。 しかし、右膝に僅かでも体重がかかると、堪えようのない激痛が走る。 もちろん、松葉杖を使用しているがそんな物は役に立たず、歩くことすら儘ならない。 ――――クソッ! 何でこんなことに……。 やはり、インターハイの畳に上がることはできないのだろうか。 そんな絶望の淵に立たされた光輝が、最後の望みを託していたのは父、龍二(りゅうじ)だった。 龍二は柔道整復師という国家資格を持ち、自宅の一階で接骨院を開いている治療家だ。 幼い頃から稽古中に怪我をする度、適切な処置を施してくれた彼なら、今回も何とかしてくれるかもしれない。 光輝はそう自分に言い聞かせ、必死で歩みを進めた。
/131ページ

最初のコメントを投稿しよう!

26人が本棚に入れています
本棚に追加