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「わあっ」「きゃあっ」
驚いて手をチャックから放したから
リュックの中身をのぞく作戦は失敗に終わったわ
「ああビックリした」
「ケイ君もう一回やってみて」
「う、うん」
犬は背中でもかゆかったのか身震い一つした後は何にもなかったかのように
またしきりにその辺の匂いをかぎはじめたわ
そこへケイ君がゆっくりそおっと手を再び伸ばしたその時
犬は大事な約束を思い出したかのようにスタスタ歩きはじめたの
「え~待って、ミーちゃんどうしよう」
「あんもう、付いて行こうケイ君」
犬はトコトコ人並みくらいで歩いたから
じゅうぶんミーちゃんケイ君でも付いて行けたわ
おまけに車の多い道も通らなかったので二人と一匹は散歩を楽しんでいるみたい
7月の放課後はなかなか帳が落ちないから
ちょっとくらいの道草は気にならない
ましてやもうこの場所はいつも友達や姉弟で遊んでいる大きな団地
六丁目の団地の敷地内だったから
「六団に来ちゃったね」
「うん、この犬六団に住んでいるのかな」
「僕の友達も六団に住んでるよ」
「もしかしたら知り合いの犬かもしれないね」
二人は喜んで尾行を楽しんだわ
でも犬ったら六団の敷地に入ったからと言っても
全く落ち着くこと無く
あっちへウロウロこっちへキョロキョロ
なかなか家に帰ろうとしないの
「あーん、まだかなミーちゃん」
「うーん、なかなか帰らないねケイ君」
二人がいよいよしびれを切らしたその時ね
「あっ、ケイ君、早く」
犬が小走りに団地のロビーに入っていったの
「ダッシュ、ダッシュ」
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