第1章

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俺は、探偵だ。 でも、正直言って、胸を張って「探偵だ!」と言える仕事など…一度もしたことがない。 探偵社に入ったのは、十年前、俺がまだ23の頃、今日と同じどしゃ降りの雨の日だった。 大学卒業後、とくにやりたいこともなかった俺は、父が立ち上げた会社に成り行きで入り、仕事を始めた。 …それが失敗だった。 最初は、望んでではないとは言え、真剣に向き合って働こうと意気込んでいた。しかし、社員たちは、そんな俺を認めようとはせず、俺に回って来たのは、雑用や汚れ仕事ばかりだった。 そんな生活の中で俺のやる気は日に日に消えていった。 そんな生活が3年ほど続いたある日、俺は親父から呼び出しを受けた。用件は、極秘の依頼だった。 なぜ俺にとも思ったが、歩合制で収入の少なかった俺は生活費のために、受けることにした。 依頼内容は、ある人物の動向調査だった。調査の期間は1ヶ月、時間帯は15時から21時の間だけ、そして条件は、絶対に相手に接触しないこと。それだけ。 意外にも楽に終わりそうな依頼に俺は依頼主の男と快く握手を交わした。
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