第1章

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その日、俺は探偵で築いた情報網を駆使して依頼主の正体を探し当てた。 依頼主の名は上岡隆二【かみおかりゅうじ】日本では有名なヤクザ一家の幹部らしい。 しかし、その正体を知った直後、俺は今の自分にはどうしようもないことを知り、家路についた。 家についた俺は、パソコンを開き、石黒家のその後を調べ、その結果、対象者だった男は生きていたということが判明した。それを見た俺はホッと胸を撫で下ろし、明日謝罪にいこうと決心を固めた。 しかし翌日、前日の俺の決心は一報のニュースによって、無惨にも打ち砕かれた。 そのニュースのタイトルにはこう書かれていた。『放火に遭い、家族を失った男が自殺』と。 それからの記憶はほとんどない。 家にあるかぎりの酒を飲み、胃の中が空になるほど吐き、目が腫れるほど泣いて叫んで、翌朝、ベランダの手すりに手をかけた。 その時、空を見つめる俺の目の前に黒い髪の男が現れた。 本来なら、驚き、疑問をぶつけるところだろうが、命を断とうとしている俺にはそんな気力などなかった。
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