第1章

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次の日の昼、会社の休み時間に母親へ電話する。 「もしもし、俺だけど」 意気揚々と話だす。 「あの~うちに息子はいないんですけど」 オレオレ詐欺(母さん助けて詐欺)と間違えているようだ。 「俺だよ、タダシだよ。入院費を工面できたから電話したんだ」 「本当にタダシかい?本当かい?」 どんだけ信用されてないんだ。 子供の頃の思い出を話しようやく信じてもらえた。 「ありがとうね。これで安心できるよ」 少し後ろめたかったが、母親の嬉しそうな声を聞き安心した。 「じゃあ30万円振り込んでおくから、足りなくなったら電話して」 「本当にお金大丈夫なのかい?無理してないだろうね」 「大丈夫、宝くじを買ったら偶然当たってさ。日頃の行いがいいからかな」 「それならいいんだけど…」 「どうしたの?」 「なんでもないわ、ちょっと昔を思い出しただけだから」 「そう、じゃあ俺仕事に戻るから」 電話を切りひとまず区切りがついたと安堵した。 一時はどうしようかと思っていたけど助かった。 母親の話で俺も昔聞いた話を思い出した。俺が生まれる前オヤジは真面目に働いていてすごくはぶりが良かったらしい。何の仕事をしていたのかは聞いていないが、すごく高給取りだったとようだ。 車は毎年買い替えていたし、国外旅行だってたくさん行ったと。 でも、ある日突然金回りが悪くなった。 車も別荘も売り払い、貧乏になったと。 そんなに金を無駄使いするからだ。 俺はそんなバカな使い方はしない。 この金で人生を変えてやるんだ。 携帯を握りしめ心に誓うのだった。
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