◎月10日

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 顔に日差しが当たって目を覚まし、カーテンを閉めずに寝たことに気付く。オレはガバッと起き上がり、植木鉢を置いた方に目を向ける。 「ああ、良かった」  植木鉢には全くと言って良いほど日が当たっておらず、見事に陰になっていた。あいつも昨日とは違って植木鉢のド真ん中で爆睡中だ。  念の為にと皿に用意しておいた水には、手が付けられていなかった。本当に熟睡してたんだな。 「時間は……まだ大丈夫だな」  時計を見てまだ時間があることを確認したオレは、水が入った皿と空っぽのジョウロを持って、台所へと向かう。  皿の水を入れ替え、ジョウロに水を汲み、部屋に戻って早々に水をやった。 「おい、起きろー」  昨日よりは比較的優しめに水をかけてこいつを起こす。寝起きは悪くない方のようで、数十秒後にはいつも通りになった。  オレはそんなこいつの目の前に、新しい水の入った皿と、昨日戻したのにまた落とされたスーパーボールを置く。 「気に入っていない訳じゃ……ないんだよな」  スーパーボールを見た途端、こいつはきらきらとした目でスーパーボールに駆け寄っているし。  多分、相当どんくさいんだろうな、うん。 「そんじゃ、オレは学校に行くから」  昨日のことがあるし、念には念を入れて、カーテンはきっちりと閉めておく。心なしかこいつもホッとしているような……。 「スーパーボールはいいけど、お前は植木鉢から落ちんなよ」  相変わらず言葉が通じているのかは謎だが、通じていることを信じてオレはこいつに念を押す。  下手に部屋をうろつかれて、万が一また干からびられたら困る。そんな思いを込めて。 「……よし、行くか」  オレにしては珍しく余裕のある登校時間に、少し浮かれ気味になる。  ……まあ、それでも遅刻になりかねない時間帯ではあるんだがな。 「あ、そうだ」  登校中、信号待ちをしていたオレは、ふと妙案を思い付く。 「スーパーボール以外にも何か用意しておいた方がいいな」  部屋を探せば何かあるだろうし、色々あった方があいつもいいだろう。と心の中で頷いたオレは、青信号を見逃していた。  そして、学校に付いてから気が付いたけど、これは別に妙案でも何でもなかった。ただの普通に当たり前のことだ。
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