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顔に日差しが当たって目を覚まし、カーテンを閉めずに寝たことに気付く。オレはガバッと起き上がり、植木鉢を置いた方に目を向ける。
「ああ、良かった」
植木鉢には全くと言って良いほど日が当たっておらず、見事に陰になっていた。あいつも昨日とは違って植木鉢のド真ん中で爆睡中だ。
念の為にと皿に用意しておいた水には、手が付けられていなかった。本当に熟睡してたんだな。
「時間は……まだ大丈夫だな」
時計を見てまだ時間があることを確認したオレは、水が入った皿と空っぽのジョウロを持って、台所へと向かう。
皿の水を入れ替え、ジョウロに水を汲み、部屋に戻って早々に水をやった。
「おい、起きろー」
昨日よりは比較的優しめに水をかけてこいつを起こす。寝起きは悪くない方のようで、数十秒後にはいつも通りになった。
オレはそんなこいつの目の前に、新しい水の入った皿と、昨日戻したのにまた落とされたスーパーボールを置く。
「気に入っていない訳じゃ……ないんだよな」
スーパーボールを見た途端、こいつはきらきらとした目でスーパーボールに駆け寄っているし。
多分、相当どんくさいんだろうな、うん。
「そんじゃ、オレは学校に行くから」
昨日のことがあるし、念には念を入れて、カーテンはきっちりと閉めておく。心なしかこいつもホッとしているような……。
「スーパーボールはいいけど、お前は植木鉢から落ちんなよ」
相変わらず言葉が通じているのかは謎だが、通じていることを信じてオレはこいつに念を押す。
下手に部屋をうろつかれて、万が一また干からびられたら困る。そんな思いを込めて。
「……よし、行くか」
オレにしては珍しく余裕のある登校時間に、少し浮かれ気味になる。
……まあ、それでも遅刻になりかねない時間帯ではあるんだがな。
「あ、そうだ」
登校中、信号待ちをしていたオレは、ふと妙案を思い付く。
「スーパーボール以外にも何か用意しておいた方がいいな」
部屋を探せば何かあるだろうし、色々あった方があいつもいいだろう。と心の中で頷いたオレは、青信号を見逃していた。
そして、学校に付いてから気が付いたけど、これは別に妙案でも何でもなかった。ただの普通に当たり前のことだ。
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